日本語からたどる文化(’11)  第6回

この「日本語からたどる文化(’11)」という番組は、以前テレビで偶然第2回の「名前」の回を視聴したことがあって、結構面白かったので記憶に残っていました。


土曜日、「身体」がテーマの第6回が放映されていたので、メモを取りつつ見てみることに。
身体にまつわる日本語表現を取り上げたり、身体を使った言葉を使わないコミュニケーションについても触れていました。


ハグ、握手、お辞儀など「表象記号(エンブレム)」という身体動作について解説したときに、これは学習しないと身につかないという話が興味深かったです。自身の文化のエンブレムならば、幼い頃から自然とどんな時にどのように行うかは自然と身につけますが、異文化から来た外国人はそうはいかない。女性の日本人講師の方はアメリカ留学中に、きつく抱きしめすぎてしまったり身体を触れ合わせるのが長すぎてしまったり等といろいろ失敗しつつ、ハグの仕方を学んだそうです。外国の言葉ならば教えてもらえるけれど、外国のエンブレムはあまり改めて教えてもらう機会も少ない、とも言っていました。確かに国内の日本人同士でハグするってまずないもんなぁ。ハリウッド映画とかでハグするシーンというのはよくあるので、簡単に自分でも出来るんじゃないかと軽く考えてしまうけど、じっさい異文化における自然な振る舞いって意外と難しいのかもしれませんね。


あと、「発話調整子」という身体動作の「視線」についての例で、二人の人物が会話しているVTRが出てきたのですが、それも面白かった。「人と会話をする時は相手の目をしっかり見なさい」とはよく言われるマナーですが、実際の会話の様子をじっくり観察してみると必ずしもそう単純ではないのだ、とのこと。聞き手はしっかり相手の顔を見るけれど、話し手は視線をはずし相手の顔を見ないことが多いのです。二人で話していると話し手と聞き手は頻繁に入れ替わりますが、「聞き手は相手を見て、話し手は相手を見ない」というのは誰がどちらの役割を果たしていても共通しているそうです。あまり意識したことはなかったけれど、言われてみれば確かに私もそう振舞っているかもしれません。面白いなぁ。


この第6回は用語の解説が多くを占めていました。最後に日本社会の同質性を前提とした高コンテクストコミュニケーションスタイルという言葉が出てきましたが、これについてはちょっと解説が少なくて消化不良かも。次回もその辺りの話が出てくるようなので、見てみたいと思います。





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以下、覚え書き。


■体を使った日本語表現は主に3つに分かれる。

  • 体の部分を使った表現  例:首をかしげる   
  • 慣用句  例:足が出る、顔が広い、首が回らない
  • 体の一部で人全体を表す表現  例:手が足りない


■英語でも↑と同じような表現はある。例えば、

  • 体の部分を使った表現ならば「from head to toe」。
  • 慣用句ならば「give 〜 a hand」。
  • 体の一部で人全体を表す表現ならば「head count(頭数)」など。


■身体動作は以下の5つに分かれる

  • 表象記号(エンブレム)  例:手を振りながらバイバイをするときの動作
    • 言葉の代わりに使うことができる→言葉と性質が似ている
    • 共有している人達の間でなければ使えない
    • 意図的に行う動作である
    • 動作とそれが表している意味の間の関係は恣意的である
    • 学習する必要がある
  • 例示子――何かの例を具体的に示す動作 例:手で大きさを示しながら「このくらいの魚を〜」 
    • 言葉を補う
    • 言葉の代用としては使えない
    • 意図的に使う
  • 感情表示
    • 基本的な感情の表情は文化普遍
    • 顔の表情はかなりの程度までコントロール可能
      • 表出ルール:どの場面でどの表情を出すかというルール。
      • 顔の表情の作り方は主に以下の4つ
        • マスキング:特定の感情を別の感情に置き換える 例:負けて悔しくても勝者を称える
        • 強化:表情を誇張する
        • 弱化:表情を弱める
        • 中立:表情の全てを抑制する。いわゆるポーカーフェイス。
  • 発話調整子 例:視線を合わせる
  • 適応子 例:貧乏ゆすり
    • 自分自身がその場に適応するために行う動作
    • 無意識のうちに行うことが多い


■身体接触は以下の2つに分けられる

  • 本能的身体接触 例:赤ん坊が母親に抱かれて安心する
  • 儀礼的身体接触
      • 専門職
      • 社会的
      • 友情
      • 恋愛
      • 性愛
    • 身体接触を始めることが出来るのは立場が対等か上の者


■コンテクストとは、あるコミュニケーションが行われる場全体を指し、前後の文脈、物理的な環境、対人関係など全て含む

  • 日本は、高コンテクストコミュニケーションスタイル→遠慮と察し
      • 聞き手は話し手の言いたいことを察する能力と責任が求められている→日本社会の同質性が前提?