日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』 前期

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近代日本画の代表作が集まると聞き、上野に見に行ってきました。学生時代数年間油絵を齧っていたので西洋絵画には多少なりとも馴染みを感じているのですが、そういえば日本画ってあんまり見たことないな、どんなもんなんだろう、と前から気になっていたのです。

  • 会場:東京都美術館
  • 日程:2014年1月25日〜2月25日(前期)  2014年3月1日〜4月1日(後期)
  • 料金:1400円 (大人、当日券)


さて、「日本美術院再興100年」と仰々しく名付けられたこの展覧会ですが、ポスターやチラシによれば、これは以下の経緯からきているようです。日本美術院明治38年(西暦1898年)岡倉天心によって創立されたものの、大正初年には事実上の休止状態に陥りました。大正3年(西暦1914年)に横山大観や下村観山らが中心となって再興、以来戦中の2年を除き毎年秋に院展は開催されています。途中から試作的な作品や小規模作品が中心となる春の院展も加わり、春と秋の年二回の院展は継続され現在に至ります。今年、平成26年(2014年)は日本美術院の再興から100年目にあたるため、それを記念して院展の代表作を集めたのが今回の展覧会なんだとか。


平日の午後に行ってきたせいか、はたまた冷え込んだ曇り空の日だったせいか、人も少なめで見やすかったです。



以下、特別印象に残った作品について個別に感想を書いてみました。


安田靫彦 『飛鳥の春の額田王

教科書、国語便覧、社会科資料集などでおなじみの作品。おそらく日本の学校で教育を受けた人なら一度は見たことがあるんじゃないでしょうか。それだけにあまり新鮮な感じは受けないだろうな、などと見る前は思っていのですが、実際に実物を目の前で見てみたらそのインパクトにハッとしました。春を思わせる柔らかい緑と赤の繊細ながらも美しい彩り、まろやかな線、女性をテーマにしている作品にふさわしく実に優美です。予想していたより大きな作品でもあり、印象深かったです。
ちなみに同作者の『卑弥呼』も展示されていました。こちらの作品も良かったです。

横山大観 『紅葉』

6曲1双の屏風に描かれた大作です。川辺に立つ紅葉の木を描いたものですが、流れ行く川の水の深い青、水面に大きく張り出す紅葉の鮮烈な赤さ、そのコントラストが素晴らしかったです。紅葉も一枚一枚丁寧に描き分けられており、見ていて飽きません。迫力たっぷりで豪華絢爛、贅沢な気分になれる作品でした。あまりにも気に入ったのでミュージアムショップでこの作品のポストカードを買おうかなと思い手にとったのですが、小さなポストカードになってしまうとやはりどうしても魅力は減ってしまうものですね。当たり前ですが、どどん!と見る者に与える存在感や迫力は実物にはかないません。

小倉遊亀 『径』

青空を背景に、籠を片手に提げ日傘をさす母親、その後ろを黄色い日傘を掲げて白い服の幼女が、さらにその後を犬が歩いている様子を描いた作品。女の子のぷにっとした短い足がとても可愛いし、両手で日傘を高く掲げる仕草も幼い子らしくて微笑ましいです。明朗で清爽な雰囲気を放っており、しみじみ良い絵だなぁと思わず見入ってしまいました。
同作者の『舞妓』も非常に可憐で良かったです。白い着物の裾の模様が細かく描き込みされていて綺麗でした。

梅原幸雄 『神灯につつまれて』

平成4年製作ということなので本展の中ではわりと新しめの作品(といっても20年以上前のものですが)。初めて見る絵でしたが、一見してすぐに惹きつけられました。インド人でしょうか、赤い薄布を頭から上半身に纏わせた二人の若い女性(そのうち一人は腕に赤子を抱いています)が正面を向いて立っています。光を通す赤い布は彼女達の身体のラインを一部透かしつつ身を包んでおり、なんとなくその神秘的な様子を神灯に見立ててタイトルをつけているのかなと思いました。エスニックな香りを放つ題材というだけでもうインパクト大ですが、暗い背景に赤の印象的な力強い色使いも、モデルの真っ直ぐな眼差しも求心力がありました。



その他印象に残っているものを下記にメモしてみました。

堅山南風『大観先生』、西田俊英『プシュカールの老人』、大野百樹『谷川岳』、小林古径竹取物語』、平櫛田中『酔吟行』、川端龍子『佳人好在』、下村観山『白狐』『弱法師』、中村岳陵 『婉膩水韻』