古き良き旧三笠ホテル


前回の続きです。この記事では旧三笠ホテルについてを中心に書いていきます。



旧三笠ホテル


カラ松林に囲まれた別荘地に建つ旧三笠ホテルに行ってきました。


現役で営業している万平ホテルとは違って既に1970年に廃業していますが、ここも軽井沢の歴史には欠かせない重要なホテルです。渋沢栄一乃木希典近衛文麿有島武郎*1志賀直哉夏目漱石森鴎外愛新覚羅溥儀など教科書に出てくるような日本史の有名人物たち、そして数多くの外国人たちが宿泊したり、またパーティに参加したりと華麗な社交の場だったようです。何しろ「軽井沢の鹿鳴館」とまで呼ばれたそうですから本当に華やかだったんでしょうね。
ホテルの来歴についてはこちらのサイトに詳しいです。



明治38年(1905)落成。ということは2011年現在、百年以上も前の木造建築なんだなー。


設計は岡田時太郎。監督は佐藤万平。棟梁は小林代造。設計・施工を日本人が手がけた初めての純西洋風建築なのだそうで、国により重要文化財に指定されています。


面白いのが建築に佐藤万平がかんでいること。佐藤万平といえば万平ホテルの初代創業者ですから、近隣の同業者ですよね。なのに商売敵の三笠ホテルの建築に手を貸しているなんて、どんな意図があったんでしょうか。やっぱり軽井沢の発展を願ってのことだったのかな。
ちなみに棟梁の小林代造も佐藤万平に関連した人物だそうです。軽井沢一と称えられる腕の良い大工さんで、万平ホテルを施工した人だったとのこと。



当時のラウンジを復元した様子です。年代物らしいピアノや暖炉がありました。窓辺の黄色いカーテンが美しい。



この椅子、面白いデザインだなぁ。



アーチ型の意匠がまろやかな雰囲気を醸し出しています。



ソファのある客室。



中央階段。
ちなみに現代建築に慣れた身からすると、この階段や廊下の幅、また部屋も意外と狭く感じられました。体格の良い西洋からの宿泊客はちょっと窮屈だったんでは?



お庭の黄色いお花。



庭に咲いていたコスモス。


すっきりと端正なデザインの中に愛らしさと上品さを感じさせる建物でした。

旧三笠ホテルは、戦前は現在の姿よりももっと大きかったそうです。それだけの規模の西洋建築を明治時代に木造でやっているというのはやっぱり凄い。
電灯によるシャンデリア照明、英国製タイルを張った水洗のお手洗い、英国製カーペット……、明治後期の最先端を集めたという心意気も良い。


当時の軽井沢住民にとって、この大きくて華やかな西洋建築はどれだけ眩く映ったことか。見慣れぬ風貌で異国の言葉を喋る外国人、そして生活水準の明らかに違う富裕な上流階級の人々が次々と来軽し、西洋風な別荘やホテルがどんどん建っていく状況を、生粋の地元民はどんな思いで見ていたんだろうと興味がわきます。外国人からの依頼で地元の農家がキャベツなどの高原野菜を栽培し始めたり、小林代造率いる地元の大工たちのように西洋式の建物も手がけるようになったり、パンやジャムを売るお店ができたりするところを見ると、案外柔軟に状況の変化に地元民たちは対応していったんだなと思います。旅人をもてなすことに慣れた宿場町だったからこそ異文化も受け入れやすかったんでしょうね。




旧三笠ホテルの近くに生えていたキノコ。形が面白い。



旧三笠ホテルの前の通り。元スイス公使館の深山荘が近くにありました。



おまけ 旧軽とその周辺で食べたもの


こちらは旧軽井沢銀座の写真です。夏休みが終わった後だったためか、人出はそんなに多くなかったように感じましたが、アジア圏からの旅行客も結構いるようであちこちで中国語や韓国語らしき発音を耳にしたのが印象深かったです。外国人にとって東京や京都ほどメジャーじゃないでしょうに、よく皆軽井沢のこと知ってるなー。
軽井沢と外国人、というと戦前のイメージを引きずったままつい西洋人を想像してしまいますが、新興国の勢いが増す昨今では、富裕なアジア系外国人へと認識を改めないといけないんでしょうね。


旧軽では大きくて綺麗な犬を連れた別荘族と思しき姿がちらほら見受けられました。おお、軽井沢っぽい。別荘族の皆さんがよく言う「大衆化しすぎて昔の情緒が失われてしまった」とか「今の軽井沢は俗っぽすぎて嫌だ」などの意見ももちろんわからないでもないけれど、今回やっぱり軽井沢はまだまだブランド力のある土地だなぁと思いました。

信州産じゃがいも


旧軽の浅野屋に行くならパンを買うべきなのでしょうが、今回はジェノベーゼがたっぷり絡んだ信州産のじゃがいもにしました。美味しかったです。けど、ガーリックの匂いは強烈だったので人と会う前に食べるのはおススメしません……(笑)
ところで浅野屋ってこの軽井沢旧道店が本店の長野県発のパン屋だとばっかり思ってたんですが、実際は東京は千代田区が発祥のお店だったそうですね。知らなかったなぁ。

チーズソフト


軽井沢駅から旧軽まで徒歩で行ったとき、あまりの暑さに耐えかねて、途中で立ち寄ったチーズ屋さんのチーズ味のソフトクリームです。
学生時代、ゼミ合宿で軽井沢に泊ったとき、家族へのお土産にここのチーズケーキを買ったなぁ。懐かしい。
赤を基調としたガーリーな内装が可愛らしいお店でした。



おまけ 雲場池


雲場池にも行ってきました。ここは紅葉の鮮やかな秋に見たい場所です。きっと水面に映って綺麗なんでしょうね。



たくさんの鴨や鯉が泳いでいました。




まとめ

旧三笠ホテルは、上流階級が集い華やかだった頃の軽井沢を今に伝える建物でした。

*1:ちなみに、有島武郎実妹は、三笠ホテルの初代経営者山本直良に嫁いでいるんだそうな。